駅の改札を入り、ホームに上がろうと思って、エスカレーターに向かいました。
僕の前には、1人の青年。大学生くらいですかね。若々しい方でした。
爽やかな感じを受けたのですが、その後ろ姿から、一つだけとても気になることがあって。左の靴下だけ、やたら、下がっているんです。他が、こぎれいだと、そういうのってやたら、目についてしまいますよね。
同じホームに向かっていたようで、先にその人がエスカレーターに乗り、少し遅れて僕が乗りました。
彼との距離が絶妙で、ちょうど、その左足の辺りと、僕の目線の高さが一緒になるんです。もう気になって、気になって。かといって、急に靴下をあげだしたら、それこそ、襲われたんじゃないかと思って、逆襲に遭うかも知れません。こんな些細なことで、肩をたたいて、「靴下、下がってますよ」、なんて、どう頑張って、格好つけて言っても、やばいやつじゃないですか。とりあえず、「気付け、気付け」と念を送りました。そうしたら、気持ちが通じたのか、その青年が左の靴下に気づいたんですね。
ウェーイ
男性は、左足を挙げ、右足一本で立ちました。腰をかがめて、左足首へと両手を伸ばします。
しかし、動くエスカレーターの上、うまくバランスが取れません。倒れそうになってしまいます。
男性は片足でのチャレンジをあきらめ、「堅実」に狙いを変えます。両手で左足首を持ったまま、その足を降ろしたのです。その左足が着地した場所は、「エスカレーターの斜めになっているところ」でした。
ここ、なんて言うんですかね。
動くエスカレーターの中で、動かない部分担当の「斜め」。
ホームへと体ごと進む青年。
動かない左足。
追いつく体、追いつかれる左足。
青年は左足を追い越すと、1度目のチャレンジをあきらめました。しかし、足首をつかんだ手を緩めることなく、再度、一歩、左足を前進。
2度目のトライ。
2度目、失敗。
3度目の正直。
3度目、失敗。
おーい!
結果、その男性は、左足首をつかんだまま、斜めを歩くように上がっていき、エスカレーターの終わりまで進みました。もちろん、靴下は救われることなく。
何だったんだ?
ちなみに、エスカレーターから降りた後、ホームの端っこに行って、靴下を直していました。